専門学校に通わず料理人へ。リゾートホテルで活躍する女性のリアル

調理の専門教育は受けていないながらも、星野リゾートの若手料理人として活躍する24歳の女性にインタビュー。現場で感じるやりがいや成長、将来の夢、リゾートホテルでの働き方を紹介しています。料理人として働くことに興味がある人に届けたい体験談です。

「専門学校を出ていなければ、料理の世界では活躍できない」——そんな思い込みを抱えている人は、少なくないかもしれません。

大学で栄養学を学んだ野村怜美さん(24)は、調理の専門教育を受けないまま星野リゾートの料理人になりました。入社して1ヶ月足らずで厨房に立ち、1年目からイベントの開発を任される活躍ぶりを見せています。

専門学校を卒業していないことへの不安を、彼女はどう乗り越え、どんな環境で力をつけてきたのでしょうか。料理人を目指している人、リゾートホテルで働くことに興味がある人に届けたい、リアルな体験談です。

「料理で誰かを笑顔にできるのが楽しい」から料理人を志した

料理人として働きはじめて3年目を迎えた野村さんは現在、星野リゾートが運営するリゾートホテル「軽井沢ホテルブレストンコート」で朝食や披露宴、宴会などの調理を担当しています。

野村さんと料理との出会いは、幼少期まで遡ります。

「子どもの頃から料理が好きで、家でもよく作っていたんです。自分が作ったものを食べて『おいしい』と言ってもらえる。誰かが笑顔になってくれるのが、すごく楽しくて」

その「楽しい」という感覚が、職業として料理を選ぶ原点になりました。

野村さんが大学で学んだのは、調理ではなく栄養学。料理人を志す人の多くが通る、調理の専門学校とは異なる道です。一見、遠回りにも見える経歴を、彼女は引け目ではなく強みとして捉えました。

「栄養の知識があるのは、料理人としてはむしろ珍しいのかなって。だったら自分だけの武器にしようと思ったんです」

とはいえ、前向きな気持ちの裏にまったく不安がなかったわけではありません。

「専門学校に行かずにこの世界へ、というのは少し迷いました。でも、やってみたいという気持ちのほうが強かったんですよね。誰かを笑顔にできる仕事に就きたかったので」

専門の道を通らなくても、食を通じて誰かを笑顔にしたい気持ちは本物でした。その思いが、彼女を料理人の世界へと誘いました。

専門学校の経験の有無で、任される仕事に差はなかった

野村さんは「1年目から若手が活躍できる」という情報を目にし、調理スタッフとして星野リゾートへ入社。入社してみると、配属された調理部署の同期のうち大卒は野村さんを含む2人だけで、他の6人は調理の専門学校出身者でした。

「正直、技術の差があるんじゃないかと不安でした。みんな専門学校で腕を磨いてきているわけですから、自分だけ置いていかれるんじゃないかって」

ところが実際に働きはじめてみると、その不安は杞憂に終わります。

「蓋を開けてみたら、専門出身かどうかで任される仕事に差はなかったんです。最初は誰だって分からないことだらけですし、むしろ現場で覚えていくことのほうが多くて。専門学校を出ていなくても、心配しなくて大丈夫でした」

もちろん、学校で技術の基礎を身につけてきた人には、その分のアドバンテージがあります。スタートの時点では、技術の習熟度に差が出ることもあるでしょう。 

けれど料理の現場では、入ってから学ぶことのほうが圧倒的に多いのも事実です。出発点の違いは、働きながら埋めていける。野村さん自身の歩みが、それを物語っています。

リゾートホテルの料理人の仕事とは。披露宴・宴会の現場のリアル

ひとくちに料理人といっても、働く場所によって仕事の中身は異なります。

リゾートホテルである星野リゾートの料理人が担当する範囲は、とにかく幅広いのが特徴です。朝食・披露宴・宴会と、時間帯も場面もさまざま。野村さんも、朝食会場のフード台の設置から、披露宴の調理まで一通り経験しています。

そして、料理人と聞いてイメージしがちな“下積みは皿洗いから”という光景は、野村さんが働く星野リゾートの厨房では見られません。

「1年目の5月にはもう独り立ちして、ほぼ毎日現場に立っていました。皿洗いを何年も、みたいなことはなかったですね」

その背景にあるのは、星野リゾートならではの分業の仕組みです。扱う食材の量が膨大なため、仕込みを専任するメインキッチンと、実際に料理を提供する会場の厨房とで分かれているのです。

「メインキッチンが仕込みをやってくれるので、現場では仕上げに集中できるんです。1年目でも、ちゃんと役割を持てるんですよ」

一度に数百人分の料理を出す宴会では、チーム全体で動く力が問われます。組織的なスピード、チームワーク、そしてタイムマネジメント。それらがそろってはじめて、温かい料理を時間通りに届けることができるのです。

働き方の面でも、一般的なレストランとは違いがあります。レストランは営業時間が長く拘束時間が長くなりやすい一方、星野リゾートはシフト制で労働時間が決まっています。

ただ、飲食業界ならではの大変さがないわけではありません。立ちっぱなしで重いものを運ぶ肉体労働も伴います。華やかに見える現場の裏側で、相応のタフさが求められる仕事でもあるのです。

調理のベースは教わりつつ、最適解は自分で見つける。難しさと、その先の成長

星野リゾートの厨房に立つようになって、野村さんはこれまで経験したことのない食材や調理のスケールに戸惑いました。

「たとえば、大きなお肉の塊に火を入れるような調理ってそれまでやったことがなかったんです。大量調理の現場では扱う食材の量が変わるので、そういった難しさがありました」

野村さんが戸惑った理由は、食材だけではありません。星野リゾートではいつも同じ厨房に立つわけではなく、シフトによって担当する会場が変わります。会場が違えば使用する調理器具も変わります。その度にオーブンの状態を確かめ、火力を調整するところから始める必要があるのです。

さらに、“これが正解”というやり方が存在するわけでもありません。

「火入れひとつとっても、先輩によってやり方が全然違うんです。最初は、どれが正しいんだろうって戸惑いました」

決まった答えがない環境は、最初こそ戸惑いを生みます。けれど野村さんは、それを成長のきっかけに変えていきました。

「いろんな先輩のやり方を見て、そのなかから自分に合うものを見つけていったんです。これだというやり方にたどり着けたときは、すごく手応えがありました」

正解が決まっていないからこそ、自分なりに工夫した結果が実を結んだと実感できます。最低限の基準だけを教わり、そこへたどり着く道は自分で見つける。その積み重ねが、自分で考えて動ける力を育み、確かな成長へとつながっていくのです。

お客様の喜びが、大変さを上回る。現場の苦労とやりがい

料理を作る難しさに加えて、披露宴や宴会会場の進行にも気を遣う場面があります。とくに気を遣うのが、少人数の会場です。

「少人数だと、ゲストの食事のペースを見ながら料理を提供します。次のお皿をいつ出すか、タイミングが読めなくて。そこは今でも難しいなと感じますね」

現場の進行に合わせて調理を担当するため、毎日決まった時間に勤務するわけではなく、シフトには幅があり、変則的な勤務になることもあります。それでも野村さんが仕事に打ち込めるのは、お客様の反応を間近で感じられるからです。

「自ら希望を伝えていることもあって、お客様の顔が見える会場を担当することが多いんですよ。料理を出したゲストの方が喜んでくださって、最後に一緒に写真を撮ることもあります」

料理を食べてくれた人の笑顔が、次もがんばろうという気持ちにつながっていく。大変さは確かにあるけれど、それを上回る喜びがある。野村さんの言葉には、そんな実感がにじんでいます。

やりたいことに手を挙げられる。星野リゾートでのキャリアの広げ方

星野リゾートでのキャリアの築き方には、特徴があります。それは、調理の腕を磨くこと以外の仕事に関わる機会もあることです。季節のイベントや特別メニューの企画など、料理人が活躍できる場は厨房の中だけにとどまりません。

野村さんが今の職場で「一番良かった」と感じているのも、まさにこの点でした。

「やりたいことを、やりたいと言える環境なんです。それがこの職場の魅力だと思います」

その背景にあるのが、月に1回の面談です。やりたいことを定期的に伝える場が用意されているだけでなく、その声が次の一歩へとつながっていきます。

「自分のやりたいことと、実際にやっている仕事のギャップがすごく少ないんです。それってありがたいことだなと思います」

実際に、野村さんは自ら手を挙げて仕事の幅を広げてきました。1年目の冬、季節イベントである「キャンドルナイトラウンジ」のメニュー開発に挑戦したのです。

「『やってみたいです』と言ってみたら、任せてもらえました。そこからは複数回続けて、イベントの開発を担当させてもらっています」

さらには、自ら志願して発注業務まで担当するなど、挑戦できる範囲はどんどん広がっています。熱意があれば職場が応えてくれる。その実感が、次の一歩を後押ししているのです。

【料理人を志す人へ】挑戦したい気持ちがあれば飛び込んでほしい

最後に料理人を志す人へ向けて、野村さんからのメッセージを紹介します。

「調理の専門学校を出ていないとできない仕事なんじゃないか、って思っている人がいるかもしれません。でも、そこは気にしなくて大丈夫です」

調理業界への就職や転職を迷っている人の背中を、彼女は力強く押します。

「やりたいという気持ちさえあれば、突き進んでほしいです。私自身、専門学校を出ていなくてもここまで来られましたから」

好きなことを仕事にするとはいえ、料理の世界で生きていく辛さもあります。それでも、と野村さんは続けます。

「辛さのなかにも、ちゃんと楽しさがあるんですよ。その楽しさを見つけて、極めていってほしいなと思います」

野村さんが見据える最終目標は、いつか自分の店を持つこと。専門学校を経ない道から料理の世界に飛び込んだ24歳は、一歩ずつ、その夢に向かって歩んでいます。

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【星野リゾートの舞台裏】調理技術より大切なこと。未経験から活躍する料理人の働き方

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